東京地方裁判所 昭和44年(ワ)3239号・昭44年(ワ)9006号 判決
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〔判決理由〕参加人は、右死亡退職金がその性質上相続財産に属せず、同人と生計を一にしていた参加人の生活保障として、同人に帰属すると主張する。
一般に、死亡退職金については、本人の勤続に対する功労報償たる性質を有するもの、本人の賃金の後払たる性質を有するもの、本人死亡後の遺族の生活保障たる性質を有するもの等があり、具体的には各場合に応じそれぞれの性質を有するものと考えることができるが、前二者の場合にも実質的には一種の遺族保障の性質を有することを否定し去ることはできない。しかしながら、特別の事情の認むべきもののない一般の死亡退職金については、通常本人の生前の労務に対する報償としての性質を多分にもつものであると解し、これにもとずいて権利関係を定めるのが相当である。まして、本件における青木時松のように会社の代表取締役又は取締役会長として、終始直接会社経営に当つてきた者については、生前の会社経営に対する功労報酬にほかならないものとみられ、遺族の生活保障としての実質は著しく後退するものと考えられる。そして、このような場合には、右退職金請求権は、本来的には本人自身の権利に属していたものと理解することができ、同人の死亡によつて、他の本人所有の財産と同様相続財産に帰属したものとして、これと同一に処理されるべきものと解するのが相当である。
なお、労働基準法第七九条、同法施行規則第四二条ないし第四五条、労働者災害補償保険法第一二条、同法施行規則第一六条、国家公務員等退職手当法第二条、第一一条、国家公務員災害補償保険法第一五条、第一六条等には、死亡退職金、遺族給付金等の受給権者の範囲、順序を定めており、又私企業内部の退職金規程等によつてこれを定めている場合があるが、これらによつて受給権者が定められている場合には、予め本人の権利として相続財産に属せしめることを排し、これらによつて定められた受給権者自身の権利として取得させると定めたものと考えられるのであるが、このような規定の適用がなく、又は退職金規程もないときは、前記のように解して相続財産に属するものといわざるをえない。
しかして、本件における青木時松の死亡退職金について直接上記法令の適用のないことはいうまでもなく、弁論の全趣旨によれば、原告会社に死亡退職金受給権者の範囲順序を定めた退職金規程が存する形跡を認められないから、本件死亡退職金請求権を参加人が取得するものと認めることは困難である。(渡辺卓哉)